第48話
栄養と食事
バブル期は大型犬種全盛でしたが、最近は小型中型犬種が人気です。ジャパンケネルクラブに登録されている頭数を見ると、プードル、チワワ、ダックスフンドが不動のベストスリーです。小型犬種の栄養学はあちこちで紹介されています。ここでは希少になってしまった大型犬種の栄養学にスポットを当てます。小型中型犬種の飼い主の皆様はしばらく我慢をお願いします。
大型犬種の成長期にはかなりのカロリーが要求されることは事実です。食べる量が多ければ、それだけ早く成長し、なんとなくそれが良いことのようにも思えます。しかし、“最大成長速度”は“最適な成長”と同じではありません。カロリーが過剰になると成長速度は早くなりますが、筋骨格が急激に成熟し、反面関節にストレスがかかります。つまり関節疾患を助長させてしまうのです。股関節形成不全症、骨軟骨炎などの原因となります。「こいつはよく食べるし、本当に元気だな。よしよし、もっと大きくなれよ」と単純に考えてはいけないようです。
成長期における1日の増体重、そして6か月齢の体重について、以下のような提言があります。「成犬時の体重が30~35kgに達する個体は、体重を1日150g以上増加させるべきではなく、6か月齢時点で成犬体重の65%を超えさせてはならない。成犬時の体重が50~70kgに達する個体は、1日の体重増加を250g未満に抑えるべきであり、6か月齢時点で成犬体重の60%を超えはならない」。
特に大型犬種にとっての危険因子はカルシウムとリンの不均衡です。離乳期~5か月齢までが最も重要な時期であり、最適な骨格発育のためにカルシウムとリンの摂取量に気を配らなければなりません。カルシウムの過剰は種々の骨形成異常障害を招きますし、不足すると発育障害を引き起こします。Ca/P比(カルシウムとリンの比率)は1.1~1.2が最適と考えられます。小型犬種ではそうでもないのですが、大型犬種が、カルシウム過剰でCa/P比の高い食事を与えられると、骨格の重度発育障害を引き起こす場合があると言われています。
発育期の重要な時期における1日のカルシウム摂取量は、200mg/kgより少なくても、1,100mg/kgより多くてもいけないと言われています。また、自家製食事の場合、リンの比率が高くなる傾向があるようです。ともあれ、体重をモニターしながら、やや痩せ気味で引き締まった体にすることが望ましいとの主張でした。
良質の蛋白質を与えること、ビタミンAとビタミンDに注意すること。
犬族の体格はチワワの1kgからマスチフの100kgまでさまざまです。そこには、遺伝、環境、栄養などが影響することは容易に想像できます。また、大型・超大型犬種では性差も大きいようです。雄は雌より必ず大きいのです。グレート・デンなんて25%の差があります。
急速に成長する時期の成長率に犬種で違いがあるわけではありません。どの犬種でも13~17%の成長率です。では、なにが違うのか・・実は成長する期間に違いがあります。大型・超大型犬種では血液中への成長ホルモン分泌期間が長く、結果として成長する期間が長くなるのです。ということで、トイ・小型・中型犬種では9~10か月で成犬体重の99%に到達し、大型・超大型犬種ではそこに達するのに11~15か月を要します。