第37話
病気
痙攣発作は脳になんらかの障害があって起こるのがほとんどです。
ただし、あらゆる疾患の急性期は痙攣発作の可能性があります。
意識がなく全身が痙攣する発作と部分的な発作(例えば肢だけ)で意識がある場合があります。 間隔は一定しませんが、発作を繰り返すことが多いようです。最初に痙攣発作が起こるのは6か月齢~5歳が多く、2歳未満では重篤な場合が多いとされています。
発作は数秒から数分ですが、元の状態に戻るまでにはもう少し時間を要します。発作中は痙攣以外によだれ・おもらしが見られますし、発作後は目が見え難かったり、のどの渇きがあったり、食欲が異常に亢進したりすることがあります。
痙攣発作の原因を脳内と脳以外に分けて記載します。
初めての痙攣発作で動物病院へ駆け込む飼い主さんがほとんどです。
慌ててですので十分に観察ができていないことが多いのですが、「どんな状況で、意識は、持続時間は、元に戻るのにどれくらい」などの基本情報が重要です。病院ではまず原因究明が行われますが、原因不明も多く、さらに完治が難しいことを認識しておかなければなりません。
一般的には通院治療です。1日に3回以上の発作がある場合は入院も必要です。癲癇には抗癲癇薬が用いられます。これも根治療法ではなく、あくまでも対症療法になります。
発作が短時間におさまるうちは、落ち着いて原因を探る余地がありますが、ひとつの発作が起きている間にさらにひとつ、またひとつ…と続いてしまう状態(重積)になると命にかかわってしまいます。そうなる前に原因追求や薬の量を調整できるようにがんばりましょう。
突然、無意識に筋肉(単一の筋肉 or 筋群)がピクピクと痙攣し、稲妻のような収縮が起こるのが“ミオクローヌス:筋痙攣”です。人間のこむら返りもこれです。 光・音が刺激になって始まることもあります。
犬のミオクローヌスは、ジステンパー感染、そしてその後遺症が多いようですが、利尿薬投与・脱水で筋肉への血流不足・血中カリウム濃度低下があるとき、脳・脳幹・脊髄に病変があるとき、薬物(鉛中毒)・肝臓病・腎臓病により脳障害があるときなどにも見られます。 また、癲癇の場合にも見られます。遺伝的な好発犬種も知られています。 遺伝的な場合は生まれてすぐにミオクローヌスが観察されます。
ジステンパー感染では消化器症状・呼吸器症状に続いてミオクローヌスが見られ、治癒してもそれが継続します。遺伝的ミオクローヌスは歩き始めに最初に観察され、立ち上がることもままなりません。 感染性脳脊髄炎もミオクローヌスの原因として少なくありません。
脳脊髄炎によるミオクローヌスは入院して、診断と治療が必要です。運動を制限せざるを得ませんし、特に嘔吐・下痢があるときはそれに見合った治療と食事が必要です。抗痙攣剤が処方されることもあります。完治はなかなか困難かもしれません。
「なんだか、へんな震えをしています」とご相談をいただき、診察させていただくとミオクローヌスだった、ということがあります。わんちゃんやねこちゃんが震える原因には、寒い時・痛い時・緊張している時…などがあり、それらに加えて、筋肉が勝手に震えてしまう「ミオクローヌス」という疾患があるのです。とても煩雑で、なかなか飼い主様にはご判断が難しい疾患です。震えが目立つなぁ、という時には、どうぞお気軽に当院までご相談ください。