翔ちゃん先生の犬の飼い方コラム

第32話

病気

病気の話 〜下痢〜

下痢(急性)

今回と次回は下痢の話です。急性と慢性に分けます。今日は急性下痢です。

突然起こる下痢が急性下痢です。若い個体で見られることが多いとされています。 免疫が十分に発達していない、好奇心旺盛でなんでも口に入れてしまう・・などが若い個体に多い理由のようです。急性下痢は食事制限だけで治ることも多いのですが、嘔吐・腹痛・血便・重度の脱水・元気消失などがあるときは早めに動物病院にかかることが賢明です。若い個体では脱水症状に陥るのも早く、場合により命の危機となるとご理解ください。

急性下痢の原因を別記します。動物病院では、まず寄生虫がいないか、パルボウイルス感染症でないかが調べられることが多いと思います。これらが原因でないときは、全身性疾患、食事、薬物、代謝疾患などに原因を求めます。それほど重症にはなりませんが、気候の急変で下痢になることもあります。

【急性下痢の主な原因】
  • 全身性疾患
  • 不適切な食事:腐敗したフード、フードのタイプと量の変更など
  • 代謝疾患:アジソン病(副腎不全)、肝臓病、腎臓病、膵臓病
  • 感染症:パルボウイルス、寄生虫
  • 薬物・毒物:非ステロイド性抗炎症剤、ステロイド剤、抗癌剤、鉛、除草剤など

食事制限、繊維質の多い食事への変更、下痢止めの処方で、急性下痢のほとんどは二・三日で回復することが多いのですが、重症では脱水症状の改善のためさらに輸液が必要になります。もし二・三日で回復しないようであれば再検査すべきです。

【ワラビーグループの診たて】

下痢の原因で一番多いのが、一過性のものです。原因は本文中にもあるとおり、 食餌の変更や気温・気圧の変動等でも起こります。ご家族の生活スタイルの変化が大きい 連休直後(GWやお盆・お正月など)にもよくご相談を受けます。 一過性の問題の際には、食餌を1回抜く(絶食)が効果的です。 絶食後も改善が見られない場合には、早めのご来院をお勧めします。

下痢(慢性)

3週間以上に渡って便の回数、硬さ、量に異常が認められる場合は慢性の腸疾患が疑われます。小腸と大腸に分けて症状を解説します。

小腸に異常がある場合は、便の量と回数が増えます。1日に2~4回の排便が見られます。体重減少、多食、排便障害、嘔吐なども見られます。吸収不良で体調不良ですし、脱水症状も見られます。

大腸に異常がある場合は、1回の便の量は減りますが、排便回数は1日に4回以上にもなります。排便障害が顕著です。しかし、体調は比較的良好ですし、脱水症状もそれほど見られません。体重減少も嘔吐もまれです。

原因も小腸と大腸に分けて記載します。

・小腸の異常
腸炎、リンパ管拡張症、腫瘍、寄生虫、腸内細菌の異常増殖などが原因です。食べ物が関与するアレルギー・中毒・薬物もあります。フードの変更、消化の悪いフード、脂肪分の多いフードも原因となります。大型犬種で若い個体に多いとされています。

・大腸の異常
大腸炎、腫瘍、寄生虫などが原因です。フードの変更、繊維質の多いフードも原因となります。さらにストレスや心的要因も原因となることがあります。

慢性下痢では、消化不良、代謝病、寄生虫、食べ物、感染症などを疑いつつ検査されます。診断が確定したらそれぞれに合った治療法が選択されます。便の量・頻度・体重などをモニターしながらの治療になります。診断が的確なら、治療を始めると徐々に回復に向かいます。

【ワラビーグループの診たて】

上記のように慢性の下痢には色々な原因があります。 あまり様子を見ずに、出来るだけ早めの受診をおすすめします。