第30話
病気
これまでは外観から気づく病気を取り上げました。今回から系統別(消化器系、呼吸器系・・・)に様々な病気を紹介します。まずは消化器系から始めますが、その第1回は食欲不振です。
食欲不振とは「食欲が低下した状態」の総称です。その原因と程度はそれこそ千差万別です。ケガ、感染症、炎症、代謝病、腫瘍などが原因ですが、特に重要なのは消化器系の障害です。
食欲を支配する中枢は視床下部の満腹中枢ですが、満腹中枢が様々な情報を受け取り、その情報を大脳に伝達して満腹感が得られます。満腹中枢への情報は末梢器官からです。血糖値の上昇、胃の満杯状態、胃腸から分泌されるホルモンなどが情報です。
食欲不振はまず飼い主が気づきます。注意が必要なのは犬側に原因がないときです。例えば、フードを変更したとき、気温が急激に上昇したときなどに、一時的に食欲が落ちる時があります。飼育環境の激変ですので、犬にとってはたまったものではありません。飼い主はどうしても犬側だけに原因を見つけようとしますが、そうでない場合があることも認識しておかなければなりません。
飼育環境に原因がないときは犬側の原因を探ります。“真性”と“疑似”に分けて食欲不振を考えてみましょう。“真性”とはまさに食欲自体が低下した状態です。“疑似”とは食欲はあるのに食物を飲み込めない状態です。犬は何度も飲み込もうとしますが、飲み込めません。歯の病気、口腔内の病気、外傷などで顔・首・のどに痛みがあるときに見られます。“疑似”では、体重が徐々に低下したり、口臭が強くなったり、唾液が多くなったりします。「食べ物に興味を示すか? 食べ物を口に入れるか? 食べ物を噛むか?」・・これらの質問の答えが全て「YES」なら、真性ではなく、疑似の可能性大です。
真性及び疑似の食欲不振の代表的な原因を記載しておきます。
飼育環境からの食欲不振は、飼い主による飼育環境の改善でなんとかなります。病状がそれほどひどくないようなら好物の食べ物をトッピングする手もあります。しかし、病的な場合は動物病院による治療が必要です。そのまま放置して「様子を見る」とはいきません。そうですね、3日以上の重度の食欲不振、10%以上の体重減少はやはり要注意です。
食欲不振の原因は以上のように非常にいろいろな原因があります。 あまり様子をみずに、気になるようであれば、早めの受診をおすすめします。