第29話
病気
今日は耳の異常です。難聴を解説します。
難聴には先天性と後天性があります。先天性とは生まれた時からの難聴、後天性とはその後に何らかの障害で難聴になった場合です。また、完全に聞こえない難聴からやや聞こえ難い難聴までその程度は様々です。
先天性難聴は主として遺伝性と考えられます。30以上の犬種で遺伝性難聴が報告されています。赤ん坊時代から音に反応しないことで診断されます。後天性難聴は老犬によく見られます。老化現象の一つですが、名前を呼んでも反応しない、寝ていて大きな物音がしても目を醒まさないなどで飼い主が気づくことが多いようです。
難聴は音の伝道がうまくいかずに起こります。腫瘍で耳がふさがれたり、炎症で耳の奥(中耳)に水が溜まったりすると物理的に音が聞こえ難くなります。聴覚に関連する神経系の障害、毒物による難聴もあります。薬物、例えば抗生物質・防腐剤・抗腫瘍剤・利尿剤などが難聴の原因になることもあります。
小さな頃からの難聴は遺伝性が疑われます。慢性疾患で治療中の犬では使用された薬物が疑われることがあります。比較的ゆっくりと進行する難聴は腫瘍が疑われます。老化による難聴も少なくありません。ジステンパーの後遺症としての難聴もあります。
遺伝性難聴には残念ながら治療法がありません。外耳炎、内耳炎などが原因の場合はまずは炎症を治療します。ただし、聴力に障害を与えるような薬物には注意が必要です。
不幸にも難聴になった犬では、原因があればそれへの対応が第一ですが、治療法がないときは飼い主のケアが一番の薬になります。安心して過ごせる環境作りです。屋外では、後ろからやって来る車、自転車などに注意を払わなければなりません。犬に命令するときも、犬が見えるところから手や指で指示を出したり、振動でわからせたりの気遣いが必要となります。
ペットの難聴の診断は非常に困難で、聞こえていないことを確定する方法はありません。 音のない世界で暮らしている彼らに配慮したいのは、突然何かをするということを避けること。 例えば、突然後ろから触るなどをするとビックリして、咬んでしまうこともあるようです。 本文中にもある通り、ペットに対しての気遣いを大切にしたいですね。
ある統計調査によると、動物病院に来院した犬で最も多い疾病が外耳道炎とのことです。来院犬の約10%が外耳道炎と診断されています。二番目に多いのが膿皮症(7.3%)、それからアトピー性皮膚炎(4.2%)、アレルギー性皮膚炎(3.9%)と続きます。皮膚がそれほど丈夫でない犬族では皮膚疾患が多いようです。それから多いのが跛行(はこう:足を引きずる歩行異常)(2.9%)です。なお、体脂肪率35%以上の肥満犬は跛行となるリスクがとても高くなるそうです。
さて、話を戻して外耳道炎です。好発犬種は垂れ耳族です。垂れ耳族は耳の通気性がよくないためだと思います。定期的な耳掃除が必須になります。
飼い主が気づく外耳道炎の症状は、「痛がる、頭を振る、耳を掻く、耳が臭くなる」です。耳の中を覗くと、赤くなっていたり(発赤)、腫れていたり(腫脹)、カサカサがあったり(落屑)、ジクジクしていたり(滲出液)などが観察されます。その上、かなりの悪臭です。
原因は、外部寄生虫、過敏体質(アトピー、食物アレルギー、接触アレルギー、薬物アレルギーなど)、異物(植物の種など)、腫瘍・ポリープ、角化異常、自己免疫病などですが、細菌・真菌の二次感染があると病状がさらに悪化します。定期的な耳掃除は大切ですが、水分を残したりすると外耳道炎の素因となります。立ち耳族ではそれほど心配はないかもしれませんが、耳掃除のやり方、注意点などは、ネットで調べて学び、動物病院・トリマーさんなどの専門家に相談してください。
治療はまずは外耳道の清掃から始まります。それから薬です。なお、薬剤投与後も3~7日毎の耳掃除が推奨されます。原因がわかれば原因への治療が優先されますが、一般的に二次感染を抑えるために抗生物質、抗真菌剤が使われます。腫れと痛みを鎮めるためにステロイド剤が使われます。
外耳道炎の大半は、定期的な外耳洗浄(耳掃除)にて予防できます。 炎症を起こさないうちに早めに汚れを落としてあげましょう。 難しい処置ではありませんので、ご自宅で行っていただけますが、 正しい洗浄方法を知っていただく事は重要です。 我流ではなく、一度動物病院スタッフへ相談して教えていただくと良いと思います。