翔ちゃん先生の犬の飼い方コラム

第27話

病気

病気の話 〜鼻〜

鼻血

鼻血にはいろんなケースが考えられます。一時的に大量に出血が見られたり、少量ずつが継続して見られたりです。鼻血の原因は鼻腔内に問題があるときとそうでないときに大別されます。そうでないときの原因は、血液凝固障害、そして血管性、あるいは全身性疾患です。

・鼻腔内の問題:異物の存在、外傷、感染症、腫瘍(老齢犬のポリープなど)、歯槽膿漏の悪化などです。
・血液凝固障害:多くは血小板減少症です。免疫関連疾患、リケッチア感染、骨髄の腫瘍、再生不良性貧血などで起こります。先天的な血小板機能異常のフォン・ヴィルブランド病があります。
・血管性・全身性疾患:免疫関連疾患・リケッチア感染などによる血管炎、腎臓病による高血圧症などです。

血小板減少症はハウンド系に多く、免疫関連疾患は小型~中型犬の雌に多く、リケッチア感染は流行地に住んでいる犬、あるいは流行地を旅行した犬に見られます。

飼い主さんができることは、出血量はどうか、一時的なのか、持続して起こっているかなどを十分に観察しておくことです。この情報は診断の大きな助けになります。可能であれば鼻腔内に異物がないか、外傷がないかなども観察してください。頭部の打撲による鼻血も多いようです。鼻だけではなく、頭部全体も見ておきましょう。

鼻血は軽ければ自然と止まります。焦って綿棒などで処置したり、ティッシュを詰めたりするとよけい悪くなることもあります。まずは安静にさせて様子をよく観察してください。

原因不明で継続して鼻血が見られるときは、やはり動物病院のお世話にならなければなりません。病院では鼻腔内検査とともに血液・尿検査などが行われます。原因が確定すればそれぞれの原因に対する治療が行われます。少量で一時的であればそれほど心配いりませんが、継続して鼻血が見られるのはよくありません。かかりつけの動物病院で相談されることを勧めます。

【ワラビーグループの診たて】

最近、特に目立つのが中~高齢のミニチュアダックスフントの歯周病の悪化に伴う、くしゃみ、鼻血が原因で来院されるケースです。気になる場合は早めに病院で検査を受けましょう。

鼻の皮膚病

愛犬の鼻をよく観察してみましょう。脱色、色素過剰、紅斑(赤い斑点)、脱毛などはありませんか、糜爛・潰瘍(皮膚がはがれてジクジク状態)、水疱(水溶物の溜まったブツブツ)、膿疱(膿が溜まったブツブツ)、痂皮(かさぶた)、結節(硬いブツブツ)などはありませんか。

代表的な鼻の皮膚病として・・

・日光性皮膚炎
病変は鼻に限定しています。強い日射によって起こります。最初は鼻梁部分が白っぽくなります。

・亜鉛関連性皮膚病
亜鉛を吸収する力が弱い犬種では亜鉛不足による皮膚病があります。繊維分の多い食物の摂取、カルシウム過多などでもみられます。鼻以外に顔・粘膜皮膚の移行部・腋の下・足の裏などにも病変が見られます。

・プラスチック(またはゴム)製容器による皮膚炎
プラスチック製、あるいはゴム製容器で食事を与えている場合に起こります。鼻と唇に皮膚炎が見られますが、潰瘍・痂皮などは見られません。

・自己免疫疾患による鼻の皮膚病
・円板状エリテマトーデス:初発部位は鼻です。日射で悪化します。
・全身性エリテマトーデス:その名のとおり全身に皮膚病変が認められることがあります。特に多いのは鼻・顔・粘膜皮膚の移行部です。
・天疱瘡:最初は顔と耳に、そして足の裏に病変が見られます。

重篤な全身性エリテマトーデス、外科措置・放射線治療が必要な腫瘍疾患を除けば、外来での治療になります。 飼い主さんができることは、日射で悪化する皮膚病では日射を避ける、滲出物や痂皮などは温かいタオルで拭いてあげる(ゴシゴシとこすってはいけません)、プラスチック製やゴム製容器を交換する、アレルギーの原因となるような薬剤は避けるなどです。

病院での治療法は原因により様々です。例えば、カビ性皮膚炎には抗カビ剤、日光性皮膚炎にはステロイド剤と抗生物質が使われます。エリテマトーデスには免疫抑制療法が行われます。腫瘍では外科的切除、化学療法、放射線療法などが行われます。いずれにしても難治性の皮膚炎は病院での治療が必要です。

【ワラビーグループの診たて】

外で過ごしているワンちゃんは、夏場に鼻で土をほじくることによって、物理的に毛が抜けてしまうこともあります。目立つ場所なので非常に気になるところですが、原因を特定するのはなかなか難しい場所でもあります。本文中にもありますとおり、中には命に関わる重篤なものもありますので、おかしいな?と思ったら、早めの受診を心掛けて下さい。