これらは内分泌科の疾患の可能性が疑われます。内分泌科について、あまり聞き馴染みのない言葉かも知れませんが、主にホルモンの病気を診察します。脳下垂体、膵臓や副腎、甲状腺などの臓器はホルモンを分泌し、特定の器官系でその作用を発揮します。内分泌疾患は、ホルモンの合成・分泌、運搬、代謝、あるいはその作用の異常によって引き起こされます。
動物の内分泌の疾患には、糖尿病や副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能低下症などホルモンバランスの異常が原因となる様々な病気があります。また、近年では動物においても、高脂肪食や運動不足などの生活習慣により、糖尿病や高脂血症、肥満などのいわゆる生活習慣病が増えてきています。健康長寿の実現を目指し、それぞれの病態においてどのようなリスクがあるか、そのリスクをどのように低下させていくべきか、動物の状態を判断したうえで、その子に合った治療法を一緒に考えていきましょう。
内分泌疾患をもつ動物では、それぞれの病気に特徴的な臨床症状が現れます。それらの臨床症状をよく診断し、該当する内分泌疾患を疑います。
内分泌疾患では血液検査で特徴的な異常値が出ることが多いです。例えば、糖尿病では血糖値の上昇、副腎皮質機能亢進症ではALPの高値、副腎皮質機能低下症では電解質バランスの異常、猫の甲状腺機能亢進症ではALPの上昇、犬の甲状腺機能低下症では非再生性の貧血などが認められます。
多くの内分泌疾患で多飲多尿が見られます。尿中の成分を検査することで体内の変化についても調べることが可能です。
内分泌腺の評価のために画像診断で状態の確認を行います。適切な治療を選択するためにも重要な検査です。
糖尿病は膵臓から分泌されるインスリンの不足、または作用不足によって血糖値が上がってしまう病気です。インスリンの作用が不足すると糖・タンパク質・脂質代謝が障害され、筋肉や脂肪組織の糖がうまく利用できず、肝臓では糖新生が亢進して、高血糖を引き起こし、尿中にも多量の糖が漏れ出てきます。
代謝障害によって、様々な全身症状や重篤な合併症も引き起こす怖い病気です。特に多飲多尿(水をいっぱい飲む、おしっこをいっぱいする)などの症状が特徴的です。
副腎皮質ホルモンの過剰分泌によって起こり、クッシング症候群とも呼ばれます。このホルモンが過剰に出ていると、多飲多尿や腹部膨満、脱毛、毛づやが悪くなるなどの症状を示します。また、糖尿病の併発や免疫力が落ちたりと様々な病気につながっていきます。お家で様子をよく観察してもらい、早期に治療していくことが大切です。
甲状腺の構造的または機能的な異常により、甲状腺ホルモンの生産が不足することで起こります。嗜眠傾向、無気力、肥満、脱毛などの皮膚病、頭が傾くなどの前庭障害、全体的に浮腫んだような状態になり「悲劇的顔貌」と呼ばれる顔つきになるなどの症状を示します。 本症例では甲状腺ホルモン製剤の投与により、肥満の解消、皮膚状態の改善、活動性の改善が認められました。