翔ちゃん先生の犬の飼い方コラム

第15話

問題行動

問題行動〜わがまま、むだ吠え、欲求不満〜

1.問題行動~わがままへの対処法~

1-2.散歩中に呼んでも戻ってこない

他の犬との遊びに夢中なとき、なにか興味ある匂いがするとき、小動物を追いかけているときなど、呼んでもなかなか戻ってこないことがあります。
呼び戻しの訓練が不足している、飼い主さんの支配性が確立できていない、などが原因のようです。
飼い主さんの支配性確保はすでに紹介しましたので、ここでは呼び戻しのポイントを記載します。

2.遊び、食べ物などをうるさくせがむ

これの対処は簡単です。合言葉は“無視”です。
飼い主さん(家族全員)の心がけ次第です…こう書くと簡単そうですが、実は意外と抜け駆けが出てきますので大変なのです。
我が家の抜け駆けは実は私です。カミさんと娘は厳格に接することが出来ます。
隠れて食べ物を与えるのが私です。コーギー・三四郎の体型は限りなく充実しています。

【基本的な対処法】

  • どんな場合でも、「うるさくせがんでいるときは無視する」というルールを早く確立する。家族の一人でも抜け駆けするとダメ、一家そろっての無視
  • なかなか無視できないときは、犬だけを残してその部屋を離れればよい。あるいはすぐにその行動をやめるくらいの強さで叱る
  • 無視を始めた二三日は、以前にも増してうるさくせがむ。でも、無視を続ければ、早晩、犬も諦める
  • 無視は厳格に行い、例外はダメ。一度でも要求に応じると元の木阿弥

3.むだ吠え

過剰な吠え方、つまり“むだ吠え”の原因はさまざまです。
攻撃性、分離不安、遊びへの欲求、興奮させる刺激、恐怖などなどです。
まあ人間にとっての“むだ”であり、犬にとっては必要に迫られての叫びなのかもしれません。

【対処法のポイント】

一般的な対処法
  • 何が刺激なのかを突き止める
  • 「静かにする」を教える

まずは吠える刺激がなんなのかを突き止めなければ対処もできません。
そしてその刺激を減らすようにしなければなりません。
それから「静かに」の命令語を教えなければなりません。
吠える素振りが見えたときに、即座に「静かに!」の命令を発し、そして、犬を呼んで、“お座り・待て”をさせます。
よくできたら、褒めて、撫でてあげましょう。

飼い主さんが無意識にむだ吠えを強化していることがあります。
例えば、ケージの中の子犬が吠えます。
それをやめさせようと、飼い主さんが見に行ったり、ケージから出してあげたりします。
「あれあれ、どうしたの。寂しいのね、出してあげるから」。

これは、むだ吠えにご褒美を与えていることになります。
吠えたときの飼い主さんの反応、吠えることをやめさせようとする飼い主さんの行動がとても重要なのです。

飼い主さんがいるところでのむだ吠えにはなんとか対処できます。
そして、徐々に改善されていきます。

しかし、問題なのは飼い主さんがいないときのむだ吠えです。
飼い主さんにはわかりませんし、矯正がなかなか難しいようです。

一度、ご近所の方々に聞いてみてはいかがでしょう。
「あのう、うるさく泣いたりしていませんか?」「お出かけの後に少しだけね。それから帰っていらっしゃる直前にも鳴き出すのよ」…飼い犬の意外な一面がわかるかもしれません。

ところで、我が家の場合ですが、マラミュートのボビーにはむだ吠えはほとんどありません。
冬馬は、「やれ救急車が通った、灯油販売の車が通った」といっては遠吠えをすることがありました。
でも、通り過ぎればすぐにやめました。

地響きのするような低音の魅力でした。

一方、コーギーの三四郎は、“ピンポーン”に反応して玄関先に走って行き「ワンワン、ギャンギャン」です。

対処の実際として、ここでは騒音のある場所に連れ出すと吠えるときと、繋いで一匹にしたときに吠える場合を考えてみましょう。

騒音のある場所で吠える時の対処法

対処法のポイント1:強く叱る
具体的な対処法:吠えることをすぐにやめるくらいの、少し強い叱り方をします。ただし、叩くのではありません。大きな声で「ダメ!」と叱るなどで行動を躊躇させるのです。

対処法のポイント2:飼い主さんの支配性の強化
具体的な対処法:飼い主さんの命令に犬がなかなか従わない場合は、飼い主さんの支配性の強化が必要です。そうですね、まずは服従訓練のやり直しです。

対処法のポイント3:うまくいったらご褒美を
具体的な対処法:騒音を聞いても吠えなかったとき、あるいは飼い主さんの命令に従いすぐに吠えることをやめたときは、褒めて、撫でてあげます。食べ物をご褒美として使うこともできます。ただし、その他の場面で食べ物をご褒美にしてはいけません。

対処法のポイント4:呼んで”お座り”をさせる
具体的な対処法:少し訓練を進めた後吠え出しそうな素振りが見えたとき、呼んで”お座り”をさせます。あくまでも素振りが見えたときです。既に吠え始めたときに呼んでも遅過ぎます。

対処法のポイント5:無意識の強化をしない
具体的な対処法:吠えているときに、静かにさせようと、撫でたり、話しかけたりしてはいけません。無意識の強化となってしまいます。

繋いで一匹にしたときに吠えるとき

対処法のポイント1:長時間は⋯
具体的な対処法:あまり長い時間だと、ストレスもたまり、欲求不満になります。長い時間、繋いで一匹にすることがないようにしたいものです。

対処法のポイント2:長時間は⋯
具体的な対処法:欲求不満解消、運動不足解消のため、散歩に連れ出して十分に遊んであげましょう。

4.スケベな問題行動(性的な問題行動)

飼い犬が異性に興味を示さないことはブリーダーさんには問題行動になります。繁殖がうまくいきません。
でも、雄犬のマウンティング、つまり“スケベ行動”は、一般飼い主さんにとっては困りものです。
大切なお客さんにやったりするとそりゃあ大変です。
なお、マウンティングは発情前、発情中の雌犬にも見られます。

発情期になると、ボビーが、カミさん、あるいは娘の背後にまわり、乗っかろうとしては厳しく叱られています。
お客さんが来られたときに、興奮のあまり、押し倒そうとします。
冬馬と三四郎はこのようなことはありません。なかなか矯正できないのがボビーの“スケベ行動”です。

“スケベ行動”と書きましたが、人間が想像するような好色な意味合いはありません。
欲求不満、過度の興奮が原因の転位行動です。発情期のボビーの行動はいわゆる欲求不満でしょう。
お客さんへの行動は過度の興奮です。
どうも、犬の心理の中に、仲間として受け入れるべきか、敵として攻撃すべきかの葛藤が生じるためのようです。
それから、最初に転位行動の標的となった物(例えばぬいぐるみ、枕など)が、犬にとってその後特別な意味を持つ代物になることがあります。
つまり、性的興奮と特別な代物を結びつけて学習してしまったのです。
子供が特別な代物となった場合は困ります。子供をいつもカモにしてしまいます。

以下にいくつかの対処法を記載します。これらを組み合わせながら対処していきます。

対処法のポイント

対処法のポイント1:動物病院に相談
具体的な対処法:吠えることをすぐにやめるくらいの、少し強い叱り方をします。ただし、叩くのではありません。大きな声でダメ!」と叱るなどで行動を躊躇させるのです。

対処法のポイント2:性的標的を遠ざける
具体的な対処法:特別な物(例えばぬいぐるみ)が性的標的になっているときは、それを一時的に片付けます。その後、徐々に接触させるようにします。

対処法のポイント3:葛藤を和らげる
具体的な対処法:葛藤が原因の場合は葛藤を和らげる手段を講じます。例えば、お客さんには無視してもらったり、犬を優しく扱う方法を子供に教えたりします。

対処法のポイント4:気をそらす
具体的な対処法:”スケべ行動”の素振りが見えたら、犬の気をそらして、他に代わる行動をさせます。

対処法のポイント5:無意識の強化をしない
具体的な対処法:”スケべ行動”に、「あら、悪い子ね、ママがダメって言ったでしょ」なんて、優しく声をかけたりしてはいけません。行動の強化になります。また、それを面白がったりしてはいけません。実際、この行動を面白がる飼い主さんがいるから困ったものです。

5.元気すぎる

活動性の亢進、つまり元気すぎるは、ときとして手のつけられない問題行動へとつながることがあります。犬が過度の興奮状態となり、飼い主さんの制止を無視して、吠える、飛びつく、噛むなどです。また、逃げる、自動車・バイクを追いかける、物を盗むなどもその根は活動性の亢進かもしれません。

元気すぎる犬は遺伝的に活動レベルが高かったり、ご褒美を与えられるために活動性が高まったりしていることが多いようです。若い犬は一般に成犬より遊び好きで活発です。しかし、これも成長とともに影をひそめるのが普通です。いずれも、飼い主さんの支配性を強化しつつ、服従訓練、行動のコントロールで矯正が可能です。ただ原因をよく探し、個々に工夫して対応しなければなりません。

非常にまれなことですが、犬でも真性の活動亢進疾患が報告されています。多動症(過剰な活動性、訓練不能、攻撃的な姿勢・表情、落ち着かないなど)、そして注意欠陥疾患(いわゆるADHD)です。

【基本的な対処法】

  1. 運動と遊びの時間を設ける。
  2. 静かに落ち着いている、飼い主さんの命令に従うなどに対してのみご褒美を与える。その他のときは一切与えない。
  3. 犬の要求に応じない。犬がおとなしくなるまで無視する、歩き去る、閉じ込めておく。
  4. 静かにすること、服従することを教える。興奮性の高い犬は静かな環境で訓練する。
  5. 注意をそらしたり、行動を中断させたりできるものを見つけ、それを使って訓練していく。
  6. 各種訓練用具(引っ張り防止器具、ヘッドホルダー、長いリードなど)を利用する。