翔ちゃん先生の犬の飼い方コラム

第8話

問題行動

犬の心理と行動~恐怖~

問題行動を具体的に考える

本前回で「犬の問題行動を考える」の基礎編が終わりました。なにせ基礎編です。
入稿前の“かみさんチェック”でも「とても読みにくいわ!なんとかならないの?」と言われ続けました。
あれこれ工夫はしてみましたが、それでも難解だったかもしれません。
すみません、この場を借りてお詫び申し上げます。

さて、今回からは問題行動をより具体的にとらえていくことにします。幾分わかりやすくなります。
まずは「犬の恐怖心」から始めましょう。

いろんな刺激で犬は恐怖を感じます。
一番多いのは見知らぬ人に対してです。そして突然の大きな物音です。
犬が恐怖を感じる二大要因です。

車の音、他の犬も恐怖の対象です。車に乗ること、外に出ることに恐怖を感じる犬だっています。
外出を極端に嫌がり、“引きこもり犬”になることもあるようです。

恐怖心、不安、ちょいと過度の興奮状態(神経の高ぶり)などは、多くの問題行動の温床になります。
恐怖心からの攻撃行動、不安からの破壊行動・泣き叫び・排尿、過度の興奮状態でのお客様へのマウンティング、いやいやちょっと考えただけでもいろんな問題行動が浮かんできます。

恐怖、不安、神経の高ぶりに分けてお話しますが、これは便宜上の分け方です。
完全に区別することは不可能ですし、犬の心理過程でこれらが複雑に絡み合って行動につながるとご理解ください。

1.恐怖

人が恐怖を感じると、その場から逃げ出したり、避けたりします。
そしてドキドキして、冷や汗が出たり、震えたりします。極度の恐怖では“ちびって”しまうこともあります。
「とても怖かったんだよ、実はね…」と言葉で恐怖体験を語ることもできます。

対処法は原因の種類によります。
病気が原因であれば動物病院での治療が必要になりますし、問題行動へと導くなんらかの要因があればそれを取り除くようにしなければなりません。
そして最も重要なのは飼い主さんの意識改革のような気がしています。

犬が他の犬に恐怖体験を語っているかどうかはわかりません。

しかし、逃げる、避ける、震える、あえぐ、鼻を鳴らす、無意識に排尿する(ちびる)などの行動は見られます。
人と同じような行動パターンです。
ちょっと人と違う行動として、恐怖が誘発する攻撃行動があります。
いやあ、人でも恐怖心から攻撃的になる輩もいますね。

犬の恐怖反応の原因はなんでしょうか、持って生まれたものでしょうか。
確かに遺伝的な恐怖反応もあります。
いやあ、人でも恐怖心から攻撃的になる輩もいますね。

しかし、その大部分は学習されたものです。不快な刺激、驚愕の刺激を学習してしまった結果なのです。
幼犬時代の社会化期(生後1~3か月頃)、特にその後半の体験が大きく影響しています。

社会化期に経験したことのないような目新しいものや見慣れないものに対する恐怖反応は、その後ますます発達し、強化されていくと考えられます。

ある動物病院でとても痛くて不快な思いをした犬は、先生の姿を見るなり、あるいは診察室に入っただけで、病院の玄関先に行っただけで、恐怖反応を示す場合があります。
「イヤ!じぇったいにイヤ!」。

特定の先生だけなら別の先生、別の病院という手もあります。
しかし、どの病院でも、どの先生に対しても恐怖心を持ち、何らかの恐怖行動をとることがあります。

これを“行動の般化”(ここでは恐怖行動の般化)といいます。
似たような刺激で同じ行動をとるようになり、行動が一般的になったという意味でこのようにいいます。

「動物病院は怖いところだ、注射が嫌なんだよなあ~」と学習し、さらに恐怖行動が般化した犬は、病気・ケガなどのときも病院に連れて行けずとても困ってしまいます。

犬の恐怖行動は矯正するのが比較的容易だといわれています。
矯正が難しいとされている犬の習性が絡む支配的攻撃行動などとは異なっています。
同じ恐怖をさらに与えて、慣れさせることで矯正しようという飼い主さんもいますが、これはうまくいかないことが多いようです。

恐怖行動は、日常の生活の中で、徐々に、そして自然に消滅(消去)させることが一番です。
動物病院の先生を怖がる犬でも、楽しいことや安心させることを先生が与えてくださると、徐々に恐怖心は解消していくものです。

先生が、「ああら、ボビーちゃん、今日はどうしたのかな?」と優しく声をかけてくれて、ジャーキーの1本でもくだされば、恐怖心なんて吹っ飛んでいきます。

我が家の場合、冬馬は病院が大好きでした。
動物病院の自動ドアに元飼い主さんの家の面影を感じていたようです。
ボビーも病院嫌いではありません。ただし病院に入るといつになく神妙にしています。

なかなか恐怖心が消去されない場合もあります。恐怖症です。
人の高所恐怖症、閉所恐怖症と同様です。

雷の音、交通の激しいところ、ある特定の人、恐怖症の対象はいろいろです。
恐怖症のきっかけは、そのことでケガをした場合、あるいはあまりに不快な経験をした場合が多いようです。

前回も書きましたが、「雷恐怖症の犬は飼い主さんより同居犬を頼りにする」とのことです。
雷恐怖症対策にはもう一匹飼えばよい…ということで多頭飼育はいかがですか、楽しいですよ。

恐怖が誘発する攻撃行動の一番の被害者は5歳以上の男の子です。
被害数は女の子の二倍です。年齢層は5歳から14歳までといわれています。

幼稚園から中学校までの男の子は要注意です。犬にとって子供は大人とは全く異なる存在です。
特に男の子の行動は、やや乱暴ですし、突発的です。
その行動は、犬にとっては恐怖の対象にもなりますし、ちょっと脅してみたくもなります。

恐怖が誘発する攻撃行動の一番の被害者は5歳以上の男の子です。
被害数は女の子の二倍です。年齢層は5歳から14歳までといわれています。

幼稚園から中学校までの男の子は要注意です。犬にとって子供は大人とは全く異なる存在です。
特に男の子の行動は、やや乱暴ですし、突発的です。
その行動は、犬にとっては恐怖の対象にもなりますし、ちょっと脅してみたくもなります。

さて、我が家の犬達の恐怖心についてです。

冬馬は大きな交通事故に遭っていますので、トラックを極端に怖がっていました。
トラックが近づくと大きな体をそれはそれは小さくして隠れようとしていました。
他の犬達(ベス、ボビー、三四郎)はまったくの“のほほん”です。

しかし地震と雷だけは怖がります。
火事も怖がると思います。親父(つまり私)だけは舐めきっています。
「地震、雷、火事、親父」とはいきません。

2.不安

「犬が不安になった場合は?」…すぐに思い浮かぶのが、“分離不安(別離恐怖症)”です。
この場合の“分離”とは飼い主さんと飼い犬が離れた状態を指します。

飼い主さんが外出したときによく見られる様々な問題行動は分離不安によるものです。
なお、分離不安についてはもう一度詳しく取り上げる予定です。ここでは概略を紹介します。

飼い主さんの外出時に、不安感から、「物を壊す」「泣く」「排尿・排便をする」などが見られます。
この行動は飼い主さんの外出直後(30分以内)が多く、また、飼い主さんが出て行った出入口に近いところで見られます。
飼い主さんとのつながりを取り戻そうとする行動であり、その心理過程を想像すると頷けるものがあります。

とても愛着を持った飼い主さんとのしばしの別れです。
「せっかく一緒に楽しんでいたのに、なぜいなくなるの?」と犬が考えても不思議ではありません。

ついつい、玄関のたたきを噛んでしまいたくもなります。壁紙を剥がして穴を開けたくもなります。
お風呂場の入口にポテンヒット(おしっこ=マーキング)もやりたくなります。
以上の犯人は順番にベス、ボビー、冬馬です。我が家ではその他たくさんの経験があります。

飼い主さんの外出時の分離不安以外にも、新しく家族となった赤ちゃん、あるいは新しく家族となった夫婦のどちらかに対する問題行動も根は不安からかもしれません。

依存心、独占欲の強い犬では、飼い主さんの愛情を奪われたようでとても不安になります。
いろんな対処法がありますが、新しい家族の匂いに慣れさせることと、順位づけを早くそして確実に行う(つまり家族の支配性を強化する)ことが基本です。

ただ、赤ちゃんとの接触には最大級の注意を払わなければならないことは肝に銘じておいてください。

3.神経の高ぶり

飼い犬を見ていて、「何か変だな、どうしたのかな、落ち着かないな」と思うことがあります。
神経が高ぶっているように見えることがあります。

その原因となる刺激は、犬にとってとても心地よいものもあれば、逆に不快なものもあります。
例えば電話のベルの高い音に反応して興奮状態に陥る犬がいます(三四郎です)。これは本能的な高揚状態です。
元来、犬は高音に対して敏感だといわれています。

お散歩用のリード、食器などを見せると右往左往する犬がいます(冬馬と三四郎です)。
これは犬が学習した結果の高揚状態です。

恋の季節になると異常に興奮している犬がいます(ボビーです)。これも本能的な高揚状態です。
とにかく神経の高ぶった犬は以下のような様々な反応を示します。

  • 神経質になって外の音などにビクビクする
  • じっとしていないで、部屋の中をぐるぐる回ったりして、落ち着かない
  • 吠える、鼻を鳴らす
  • 頻繁に排尿・排便をする(場合によっては屋内でも)
  • べたべたと甘え付きまとう
  • 転位行動がある

“転位行動”はすでに何回も登場しました。
何か刺激を受け、どうしてよいかわからず、緊張を緩和するために、突然、脈絡のない行動をとることをいいます。

葛藤があったり、欲求不満があった場合、狂ったように床を引っかいたり、毛づくろいをしたり、物にマウンティングをしたり、自分の尻尾を追いかけたり、物を噛んだり、土を掘ったりすることがあります。
これが転位行動です。葛藤、欲求不満から逃避するために、全く無関係の行動をとるのです。

転位行動はしばしば問題行動となることがあります。
転位行動の裏に隠されている不安・興奮を発見し、それを消去する必要も出てきます。
よくよく観察して何がきっかけになっているかを見極めなければなりません。

転位行動の裏に隠されているものはいろいろです。
表にしてみました。

衝動これは本能的なものです。例えば空腹、のどの渇き、静的欲求、運動不足などです。
葛藤飼い主さん家族の言動・扱いに一貫性がないと、犬としては「さてどうしたらよいものやら」と不安になってしまいます。たとえば、ソファーに乗ることをお父さんは許すが、お母さんは許さないとか、自分がリラックスしているときは甘えてくることを許し、考え事をしているときは許さないとかです。一貫性がありません。多くの場合、犬は微妙な言動の違い、雰囲気を敏感に感じ取り、自分で行動を決めます。しかし、場合によっては葛藤から不安に陥ります。
拘束監禁車の中に閉じ込められるとか、それまで自由にさせていたのに、留守中に高価な家具を破壊したので、風呂場に閉じ込めるようにしたとかで不安になった場合です。犬だって「冗談じゃない!」と思ってしまいます。
性格的社会化期の経験が乏しく刺激の少ない環境で育った犬は、神経質になることがありますそれから、同じ刺激を内向的性格の犬では恐怖と感じ、外交的性格の犬では興奮を感じるようです。犬の性格を変えようとか、変わると期待せず、そんな問題行動を緩和するのだというおおらかな気持ちで接しましょう。

恐怖症に対する対処法

今回からは恐怖症に対する対処法を紹介します。一般的対処法とケーススタディにでも分けましょうか。

1.恐怖症に対する一般的対処法

  1. とても怖がるような状況は避ける。
  2. 恐怖行動を示したときは無視する。撫でたり、話しかけたり、見つめたりしてはいけない。
  3. 犬が正常な行動を示すように基本的服従訓練を行う。
  4. いつもなら怖がる場面で怖がらなかったらきちんと誉めてあげる。

犬がとても恐怖を感じているなら、その状況を一時的に避けた方が無難です。
知らない人との接触を避ける、散歩の経路を変えて恐い犬とは会わせないなどなどです。
無理をさせるとさらに恐怖を感じるようになります。

車を怖がる犬を交通量の多いところに連れて行って「だんだん慣れてそのうち怖がらなくなるものよ」なんて考える飼い主さんもいます。
しかし、犬にも限度があります。耐えられないような恐怖は犬にとって拷問に匹敵します。
状況を悪化させるのが落ちです。

怖がっている犬に優しい言葉をかけると、一時的には恐怖心がおさまったかのように見えます。
しかし、長い目で見れば、さらに恐怖心をあらわにするようになります。

実は「怖がると優しくしてくれるんだな、よしもっと怖がろう」と犬は考えてしまうのです。
恐怖行動を飼い主さんが無意識に強化したことになります。“無視”が一番です。

どんな問題行動にも基本的な服従訓練(来い、座れ、待て、伏せ、伏せて待て)が最も重要です。
「伏せ」「伏せて待て」はできなくても結構です。
でも「来い」「座れ」「待て」くらいはなんとかしましょう。
芸を教え込むわけではありません。
飼い主さんの支配性を高め、コントロールできるようにすることが重要なのです。

散歩中に犬が恐怖を示したらどうしましょう(例えば知らない人に対して)。
何事もなかったかのように平然と散歩を続けましょう。

つまり“無視”です。

犬を見たり、犬に話しかけたり、犬を待ったりしてはいけません。
歩くスピードを遅くしたり、方向を変えたりしてもいけません。
恐怖がそれほど大きなものでなければ、犬は恐怖に打ち勝つことができます。
もしこれが家の中であれば、見ないふりをして、自然に立ち上がったり、動いたり、別の部屋に行ったりすればよいのです。

恐怖の元(例えば自転車)が近づくのを飼い主さんが察知したとき、すぐに犬を呼び、ちゃんと来れば誉め、そして何か命令をしてみます(例えば「お座り!」)。

これは飼い主さんに注目させることにより、恐怖をうまくやり過ごすことが目的です。
でも、あくまでも犬が恐怖を感じる前にやらなければ無意味になります。
恐怖を感じてからだと恐怖行動を強化することになります。

重要なのはタイミングです。
飼い主さんも大忙しです。恐怖の元を犬より先に見つけなければなりません。

恐怖行動を示す犬に心から同情して、「怖がっているのに、叱ったり、命令をしたりしてはかわいそうよ。無視するなんてできないわ。いい子ねえ、よしよし」なんていう飼い主さんもいます。

でも、飼い主さんの支配性だけはきちんと確保しておいてください。
好き勝手が続くと、聞き分けのない“困ったちゃん”に変身します。

2.ケーススタディ

恐怖症にはいろんなケースがあります。ここでは恐怖の代表的ケースを紹介することにします。

なお、分離不安と異常な興奮のケーススタディは別の機会に紹介するつもりです。
別のケースもあるかもしれません。一般的対処法を応用したり、ケーススタディを真似たりしてみてください。

[自転車に乗った人を怖がるケース]
  1. 自転車に乗って近づいてくる人を飼い主さんが見つけたとき、すぐに犬を呼び戻す
    (あくまでも犬が恐怖行動を示す前に)。
  2. すぐに犬が戻って来たら、誉めてあげ、お座りをさせる。命令に従ったら、もう一度誉める。
    (呼び戻しができるくらいの基礎的服従訓練も必要です)
    (犬が好きな遊びに誘うのも一方法です。遊びに集中させてやり過ごすのです)
  3. 自転車が通り過ぎるのを静かに待つことができたときはさらに誉める。

※怖がり方が尋常でないときは自転車の通る道は避けた方が無難です。
それから自転車・バイク・車を見ると攻撃行動を示す場合も上記方法が応用できます。

[子供を怖がるケース]
  1. 犬に慣れた子供さんに協力してもらい、その子供さんが近づいて来るのを犬が待てるようにする。これを毎日繰り返す。ただし、無理に接触させようとしてはいけません。
  2. 飼い主さんが服従訓練を行い、犬を命令に従わせるようにする。次に犬に慣れた子供さんに命令をしてもらい、その子供さんの命令にも従うように毎日訓練する。
  3. 子供さんと犬だけでにして、命令してもらい、従ったらご褒美を与えてもらう。さらに一緒に遊んでもらったりする。ただし、きちんと陰から見ていなければなりませんよ。
[車に乗せると、震えたり、鼻を鳴らしたり、涎を流したりするケース]
  1. まず室内で基本的服従訓練をする。次に自宅の庭などで服従訓練をする。
  2. 車のドアを閉めたままで、車のそばで服従訓練をする。
  3. 車のドアを開けて、車のそばで服従訓練をする。
  4. 駐車している車に乗せ(ドアは開けたまま)そこで命令をする。従ったら食べ物のご褒美を与える。
  5. 駐車している車に乗せ、ドアを閉めて命令する。従ったら誉める。
  6. 車のエンジンをかけ(動かさない)、そこで服従訓練をする。従ったら誉める。
  7. ギアを入れる。お座りのまま、あるいは伏せのままで、怖がらなかったら、誉める。
  8. 車をほんの少し動かしてみる。それでも怖がらないなら誉める。
  9. 車を動かす距離を徐々に伸ばしてみる。怖がらずに静かにしていたときは、食べ物のご褒美を与える。
  10. 車に乗せて短い距離からドライブをしてみる。

※この対処法はステップ・バイ・ステップです。
一つのステップで、犬がまったく恐怖心を見せなくなったら、次のステップに進んでください。
※あるステップで怖がった場合、怖がらないステップに戻ってください。そしてもう一度試してください。そのときはなるべく時間をかけてステップアップするように心がけてください。