翔ちゃん先生の犬の飼い方コラム

第1話

問題行動

「獣医の目」と「飼い主の心」を併せもつコラムニストより愛をこめて

コラムを連載します

ある友人から「ホームページを開設される動物病院があるんだけれど、コラムを担当してみないか?」との話がありました。友人が私に白羽の矢を立てた理由は定かではありません。

でも、後先を考えずに「ああ、いいよ」と二つ返事で承諾しました。今考えますと、神をも恐れぬ安請け合いでした。

その後、具体化するにつれ、だんだんと不安も増してきました。私で務まるのかなという不安です。しかし、そこはすべてを楽観的に考える私です。

「まあなんとかなるか」と思いつつ、この第1回目の原稿を書いています。今年の個人目標も「コラムニストになってみるのだ!」にしました。


初回ですので、まずは自己紹介から始めることにします。名前は「翔吾」です。芸名、いや、ペンネームです。友人から「コラムを担当するなら、やはりペンネームがいるよなあ」との悪乗りアドバイスがあり、作家気分であれやこれや考えてみました。気の利いた名前がなかなか浮かんで来ません。

そこで家族会議招集です。臨時家族会議でもいろんな名前が出ては消えを繰り返しました。

結局、かみさんと娘のヤケクソ案によりこのペンネームに決定しました。
「翔ちゃん先生の一言コラム」とでもしましょうか。
なお、一言で終わらずに二言三言になるかもしれません。

私は獣医師です

自分のことを“先生”というからにはそれなりの根拠が必要ですね。

その根拠は獣医師です。
何を隠そう私は獣医さんなのです。

読者の皆さんは獣医さんというと動物病院の先生をすぐに連想されるかもしれません。しかし、獣医さんといってもその専門はいろいろです。臨床経験がまったくない獣医さんもいます。そんな獣医さんを“ペーパー獣医”といいます(私が勝手につけた呼称です)。

自動車免許を取得しても運転経験がほとんどない人、つまり運転が危うい人をペーパードライバーといいますが、それと同じです。・・・で、私は典型的なペーパー獣医なのです。
聴診器を持たせるとおそらく逆さまに持つでしょうし、注射をさせると薬液が向こう側からピュッと飛び出したりするかもしれません。「枯葉マーク(高齢者マーク)も必要なんじゃないか」という悪友もいます。

さて、「ペーパー獣医が動物病院HPのコラムを担当できるの?」という疑問をお持ちかもしれません。


そこで登場するのが我が家の犬達です。我が家では二頭の犬を室内飼育しています。
一頭はアラスカンマラミュート♂、もう一頭はウェルシュコーギー♂です。

ウェルシュコーギーは人気犬種ですので、どなたでもご存知でしょう。アラスカンマラミュートはなじみの少ない犬種かもしれません。なにはともあれ、この二頭は大なり小なりの問題児でもあります。奴等との生活をいかに快適にするかが私に課せられた命題でした。

そこで始めたのが、飼い主のための泥臭い学問でした。
犬の飼育に関する周辺知識を、内外の書籍、そして実体験から学ぶことにしました。このコラムではそれらを紹介していくことにします。

最初のテーマは昨今あちらこちらで耳にする「問題行動」です。
なにせペーパー獣医です。
我が家の失敗談の連載になるかもしれません。でも、読者の皆さんと共通の悩みを持っていますし、犬の一飼い主として同じ目線で問題行動を探求できるのではと思っています。
このコラムには我が家族を度々登場させます。メンバーを紹介しておきます。

我が家のメンバー紹介

【かみさん】

2号さんです。といってもお妾さんではありません。
ペーパー獣医2号です。職場では“お局様”になっています。
そう言えば「大奥」をかなり熱心に見ていました。
辛口コメンテーターとして最初に原稿をチェックしてくれます。
かみさんのお許しがないと入稿できません。

【娘】

まもなく中学生です。生まれたときから犬との共同生活を送っています。
根っからの動物好きになりました。
涙もろく、盲導犬の番組を見るときはティッシュの箱を抱えています。
「いぬのえいが」は最後まで見ることができませんでした。

【ベス】

初代マラミュート♀です。凛とした気位の高い犬でした。
でも、愛情細やかな心配りもできる犬でした。とても呼び捨てにはできずベス様と呼んでいました。
糖尿病で短い生涯(6歳半)を閉じました。

【ボビー】

二代目マラミュート♂です。ベス様の若いツバメです。
当然ながら“かかあ天下”です。尻に敷かれっぱなしの姿を見るにつけ、立場が同じの私としては心から同情していました。

こやつには留守中の破壊行動に悩まされました。壁紙はがしの常習犯ですし、トンネル工事が趣味です。

壁に大きな穴をいくつも開けていました。8歳になった現在はやや落ち着いています。

【とうま】

里子でやってきた三代目マラミュート♂です。
とても大きな犬でした。4年間を我が家で過ごし、ガンで他界しました。
大きな交通事故に遭っています。車への恐怖心は相当なものでした。寂しがり屋です。
留守中の泣き叫びが近所迷惑でした。とてつもなく大きな泣き声でした。

【三四郎】

コーギー♂です。2代目です。
1代目コーギー♀は事故で若くして天国に召されました。
三四郎には他犬(知り合い以外)に対しての攻撃性があります。
犬の仁義を十分に学ばなかったようです。人間に対しては誰でもOKなのですが。

犬の病気というと

さて、犬の病気というと、狂犬病、ジステンパーなどが思い浮かぶでしょうか。
これらは病原体(ウイルス、細菌、寄生虫など)が原因の病気で“感染症”と言います。
主な感染症はワクチン・予防薬の普及で本当に少なくなりました。ただ、不十分(あるいは手抜き)だと、まだまだ恐い病気です。

感染症に代わって登場してきたのが、生活習慣病、老犬病などです。飼い犬がとても長生きになったためでしょう。

感染症、生活習慣病、老犬病も確かに重要な病気です。でも、飼い主さんにとってもっと身近に感じるのは、犬の行動にまつわる問題ではないでしょうか。

  1. 「外出すると、泣き叫んだり、おしっこをしたり、家具を壊したりするんだよな」
  2. 「お父さんの言うことはよく聞くのに、他の家族はてんで無視するの」
  3. 「家族に対しても唸ることがあって心配なの。子供がいるから」

1は分離不安(別離恐怖症)と呼ばれる行動です。
2及び3はアルファ症候群と呼ばれる支配性(優位性)がからむ行動です。
「俺の方がえらいのだ!」と思い上がった犬に見られます。

犬の困った行動を“問題行動”と言います。
困った行動といっても、飼い主さんにとって困った行動です。

犬にとってはその習性に従った普通の行動の場合もあります。

いずれにしても、本屋さんに行きますと、犬の問題行動・しつけに関する本がたくさん置いてあります。犬の雑誌の特集もそれらに関する記事が満載です。

このコラムでも問題行動の話をしていきます。
次回からが本編です。