ドッグトレーナー佐々木の
しつけコラム

Vol.152 愛犬に無理はさせていませんか?

愛犬は自分にとってかけがえのない存在で、最高のパートナーであってほしいものです。しかし、生活していくうちに自分の思い通りに愛犬が応えてくれないと、ちょっとストレスに感じたりする人もいるのではないでしょうか?

ついつい忘れてしまうのが、犬は人間ではなく、動物です。しつけと言う言葉に惑わされる飼い主も多く、少しだけ擬人化している傾向も現代ではよく見られます。しつけるというよりは行動を受け入れ、させない方向にしていけば、犬に無理をさせずより良い関係ができてくるのではないかと私は考えています。

犬に合わせて妥協する事
子犬の時のハウストレーニング、トイレ、甘噛み等の最低限のしつけは必要ではありますが、元々の性質(興奮、臆病)などが強く出てしまう場合、がむしゃらに強制的にしつけをするのではなく、まずは受け入れてあげて、回避する事を行います。

例えば、耳に触るのがとても嫌がる犬がいたとします。ここで、耳掃除をしようとすると、噛み付くほど抵抗する場合は一度掃除する事を辞めてみます。まずはタッチする事だけを数カ月繰り返し、耳に触られる事の恐怖を忘れさせていき、じっくりと慣らしていきます。爪切りを嫌がる子も、同じように強要はせず、爪切りを辞めてみます。嫌がる犬に対し、言う事を聞かせる為に飼い主に従わせるんだ!とか、無理矢理抑えつけてやると言うのは今後のトラウマに繋がる可能性がある為、嫌がる事があれば、絶対に無理にはしてはいけないと思っています。

上下関係の問題ではない?
では、人がやる事を受け入れない犬は人間に勝とうとしているからなのでしょうか?私はそうとは思いません。何度も犬の子育て教育を見ていくと、ごはんを譲る事や要求吠えの注意等は母犬が教育して辞めさせているだけでリーダーと言う認識ではない感じがします。人が犬にする行動(お手入れ等)は犬の世界には無いもので、人が慣らして行かなくてはいけないものであり、どんな犬でも始めは恐怖でしかありません。

恐怖から逃れるとしたら、人でも手が出てしまうのではないかと思います。噛むほどまでに抵抗するようになった犬は主従関係とは別で、人による慣らし不足のみと考えていいかと思います。

成犬になってからの抵抗は受け入れる
子犬の時は嫌がって無かったのに、お尻に触ると噛み付くようになった等、大人になってからの抵抗がある場合は、何かの病気ではない限り根本的に改善されるのに時間がかかる事が分かりました。

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記憶が残りにくい幼少期より成犬時に何かしらの恐怖に気がついてしまった場合は記憶にもしっかり残ってしまうので、オヤツでのトレーニングや少しずつの慣らしをしていったとしても、かなり時間を要するものと思っていいと思います。
ではどうするかというと…
「苦手を受け入れトレーニングをしていく」と言うことです。例えば、爪は無理をせずにアスファルトで削れる時は外での散歩を沢山してあげたり、耳掃除が苦手であれば、タオルで頭を拭くふりをして軽く拭う、など、嫌がらない最低限の作戦で回避していってもいいのではないかと思います。

その間は時間をかけて、触れるのみだけにするなどゆっくり慣らしのトレーニングをしていくという流れを取っていきます。
噛み付いてもいいので、お手入れしてほしい!と依頼してくる飼い主さんも多くいらっしゃいますが、本人が恐怖となり、トラウマとなってしまっている以上、病的なものではない限り無理はさせない方が良い関係が出来上がってくるのではないでしょうか。

自分の犬が好きで、愛犬の楽しそうな顔を見るのが飼い主さんの希望であるのが1番のはずですから、犬に無理はさせず、最低限ストレスがかからない範囲で、できる事を見つけトレーニングをする事!これも良きパートナーであり相棒である者の考えではないかなと私は思います。