ドッグトレーナー佐々木の
しつけコラム

Vol.150 犬の仰向けは降参ではない?

犬を叱る時は仰向けにする。寝ている時に仰向けになる。そうなると、犬は飼い主に服従している?と言われる方が多くおります。しかし犬がお腹を見せる動作は服従とは違う意味を現しているのではないか?と、最近は犬の子育てや関わりを見て思うようになりました。果たして、お腹を出すという事は犬にとってどういう行動なのか?考えてみる事にしました。

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信頼性や安心感が無いとおなかを出してくれない
おなかを出すと言ってもリラックスをしてなければなかなか仰向けになってくれません。緊張していればいるほど頑なに隠そうとしてしまいます。子犬の例で言うと、自分の住処では仰向けになれるのに、知らない場所に連れて行って試してみたところ、固まってしまい、仰向けにはなりません。この場合、緊張するとおなかは見せてくれない事が分かります。しかし、子犬が成長していくうちに、人に慣れてきて、信頼性ができると何処へ連れて行ってもその人の手で触ればお腹を見せてくれるようになりました。服従している?と言うよりは、この場合は人による安心感からのリラックス動作と考えられるのではないのかと思います。

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攻撃の前にも仰向けになる
長年の経験から、過去におなかを見せていながらも攻撃してくる犬もいました。臆病だったり、テンションの高い犬であっても、性格に関わらず、自らおなかを見せてくるのに、触ると歯をむき出しにしてしまう事も…。これはどういう事なのか?教科書通りではいけないと考えさせられる行動のひとつとなりました。仰向けになるという事は?服従を意味しているのでは無いのだろうか?犬の気持ちになって考えて見た所、答えは犬の群れでの挨拶にありました。目上の犬が相手の犬に挨拶した時に、自ら転がったのにも関わらず急に歯をむいて抵抗しました。これは?「やられる前にやってやろう」と言う防衛本能が働いているのではないかと…?仰向けは降参や服従ではなく、防衛で身を守る動作の1つなのではないかと感じたのです。また、小さな頃から叱る度に大声を出し、仰向けにしていた犬が成犬になった時に攻撃性のある犬に育ったという事例もありました。

信頼性を築く前におなかは無理に触らない
つまり、おなかは犬にとって急所部分ですが、だからといって触らない訳にもいきません。こちらが「攻撃しないよ」「安心して」と理解させてあげなくてはいけませんので、少しずつ触るトレーニングも必要となります。まだ飼い主が誰か?慣れないうちから無理に仰向けにして触るのではなく、落ち着いている状態で「おやつ」を与えながら、静かに触ります。これは耳や尻尾、足等触る際も必要となるトレーニングとなります。全て強引にしては「攻撃されているのでは?」と間違った認識をしてしまったら先程お話したような「やられる前にやってやる」という大変な事になりますので、必ず「おやつ」とセットで楽しく静かに声をかけてタッチトレーニングを行う事が大切になります。

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触れたその時に睨むように見つめたり、唸るようでしたらすぐにやめましょう。逆に、口を開いたり、目を細めたり等リラックスしている様子であれば褒めてあげます。少しでも触れるだけでOKです。触り過ぎに注意するといいでしょう。因みに、寝ている時の仰向けは無意識に行われる動作であり、その場所、又はその人といる事に安心感を得ている状態となります。こちから触れる事とは別の意味があるというのが分かりました。

人の膝の上に乗ってきた時に仰向けになり、寝てしまった場合はその人のその場所が安心する所と認識されているので、この場合はうんと褒めてあげるといいかもしれませんね。まだまだ犬の行動は謎が沢山あり、日々勉強させられます。もしかすると違う意味がまだあるかもしれませんが、少なからず仰向けは全てが「服従」とは別のものなのかなと私は思いました。