翔ちゃん先生の犬の飼い方コラム

第7話

問題行動

犬の問題行動を考える

犬の問題行動を考える

これまではいわば周辺知識を紹介してきました。
お待たせしました、問題行動のある犬を飼っていらっしゃる飼い主さん、いよいよ核心に迫っていきます。

とてもおりこうさんの犬もいるとは思いますが、ほとんどの場合が大なり小なりの問題を抱えていると思っていただいて結構です。「お互いに代償を払いながら、そして譲り合いながらの共同生活なのだ」と考えておくとずっと気も楽になります。

「問題行動を完全に消滅させ、とてもお行儀の良い子に変身させよう」なんて考えないでください。
なんとなく義務感だけが先行します。そしてついには途中でギブアップしてしまいます。
張り切り過ぎず、肩に力を入れず、我慢できる程度に問題行動を緩和するのだという気持ちで取り掛かりましょう。

“美点凝視”という言葉があります。欠点はせいぜい緩和するのが精一杯です。でも、どんな犬でも良い点を持っています。それを見つめて、伸ばしてやると快適な共同生活になります。

何回かに分けて、問題行動を考える手順と飼い主さんができる対処法を紹介していきます。
1~5が考える手順です。6は対処法です。

  1. どのような問題なのかを把握しましょう
  2. その問題の経歴を考えてみましょう
  3. 一般的な情報も探ってみましょう
  4. 問題行動を解釈してみましょう
  5. 原因を特定してみましょう
  6. 何らかの対処をやってみましょう

問題行動を考える手順と対処法

1.どのような問題なのかを把握する

いつ、どこで、どのような問題行動があり、その行動のあと、犬はどのような行動をしたのかを考えていきます。問題行動を具体的にとらえることが第一です。

「この子はどうも寂しがり屋だな」だけではどんな問題なのかがわかりません。
例えば、「夜、居間に一匹にすると、泣き叫んだり、家具を壊したりする。様子を見に行くとおとなしくなるのに」なら、離れ離れになることが不安感を誘発していると考えられます。つまり“分離不安”が想定できます。

問題行動の後に犬は奇妙な行動をとることが多いようです。
例えば、飼い主さんを噛んだ後に尻尾を振って舐めにくるなどです。悪さをした犬が、その後、“自責の念”とも思われる行動をとることがよくあります。

「心から反省しているな、よしよし」などと考えないで下さい。
飼い主さんを噛んだ後に舐めにきた犬は、実はもっと攻撃したいという衝動と罰に対する恐怖との間で、葛藤状態に陥っていると考えられるのです。

そして、“自責の念”的な行動はそのほとんどが転位行動(以前出てきました欲求不満が昂じての奇妙な行動です)の一種なのです。

飼い主さんを噛むといった行動の裏側をしっかりと見つめなければなりません。そうしないといつまでたっても最悪の状況を打破することはできません。その犬の持って生まれた性格として支配欲が極めて強い場合もあります。単に発情期だったのかもしれません。

病気が原因のこともあります。皮膚病で痒みが強いときなんて、イライラして、犬だって構ってほしくないこともあります。攻撃行動が発生した状況を見ても、対象が決まった人物のこともあります。あるいは決まった状況のときだけの場合もあります。

飼い主さんが犬のいいなりで、ご褒美をせしめるチャンスが多いような場合、学習の結果としての攻撃行動が見られることもあります。家族の一人が気まぐれに極端な罰を課すために、それが犬にとってストレスとなり、ついには攻撃行動に到る場合もあります。逆に一部の家族が極端に甘やかすことにより支配性が高まった場合もあるのです。

2.その問題の経歴を考える

問題行動が初めて起きたのはいつか、どのような状況下で発生したのか、どのような対処をしたのかを次に考えていきます。

子犬の頃から見られる問題行動であれば、遺伝的なもの、初期の社会化の失敗が考えられます。(生後3か月くらいまでに人・他犬・物などに犬を慣れさせることを社会化といいます。昨今はこの社会化の重要性が特に注目されています)。思春期、2歳前後、発情中、避妊去勢手術の後などに、初めて問題行動が見られた場合は、ホルモン・バランスが影響しているとも考えられます。

三四郎は2歳過ぎから見知らぬ犬に攻撃的になりました。
これはホルモン・バランスの影響のようです。男性ホルモンがバリバリになったのでしょう。
それにケージ生活も良くなかったようです(留守中はいつもケージです)。
ボビーといっしょに居間にいるときも少し警戒気味に行動します。

ところが、ケージ=自分の縄張りに入ると、とたんに強気になります。
ボビーに吠えつきます。「こっちに来るんじゃない、このウドの大木、ボケナス!」。
挑発に乗ったボビーが「ニッ」と歯をむきます。三四郎がさらに吠え続けます。

「病気で1週間ほど自宅療養し、快復して仕事に出るようになったときから、靴をかじるようになった」。さてこれは何でしょうね、なんとなく想像できます、“分離不安”でしょうね。飼い主さんの匂いのするものを頼りにしているのです。

我が家の重鎮・冬馬が、長い夏休みの後に毎朝泣き叫んだのも分離不安です。
娘との楽しい生活を満喫していたのに、孤独な生活に逆戻りです。不安になっても不思議ではありません。なお、ドアを隔てたところにボビーと三四郎はいましたが、冬馬にとってこいつらは頼りになりません。

飼い主さんが以前やったことのある問題行動への対処法、あるいは治療に対する犬の反応が原因を探る大きなヒントになることもあります。

「とても車を怖がるので、車の多い交差点に無理に連れて行き、自動車の音に慣れさせるようにやってみた(除感作療法といいます、うまくいかないことが多くお奨めではありません)。怖がるたびに言葉をかけ、なだめてやった」はどうですか。

ありゃあ、車(あるいは騒音)恐怖症の犬を、さらに不安・恐怖状態に陥れ、その状態のときに優しい言葉というご褒美を与えていたのです。「怖がると優しくしてくれるんだな、もっと怖がろう」と犬は考えていませんか、優しい言葉が恐怖行動をさらに強化しています。

3.一般的な情報も探る

他に問題行動はないのか、犬の日常はどうか、家族構成はどうか、犬と家族の関係はどうか、飼い主さんの態度はどうかなどの一般的情報も見つめ直さなければなりません。

犬の日常がどうであるのかも重要な情報です。
これは犬がというより、飼い主さん自身の態度を知る上で貴重な情報です。

「犬はどこで寝ているか?」なんて考えてみますといろんなことがわかります。
同じベッドで寝ていれば、飼い主さん自身の愛着度が過多かもしれませんし、犬の支配性がかなり強められている場合があります。

我が家がこの質問を受けると困ってしまいます。
ボビーと三四郎が我が物顔でベッドの上で寝ています、特に真冬は。

家庭環境は問題行動の持続に関与する要因です。
例えば、規則正しい運動をさせていない、一匹で留守番させることが多い、家にいるときに犬はいつもついて回るなどは、なぜいつまでも治らないのかを考えるヒントになります。

食餌の与え方も重要です。ときどき台所を占領する、食器を下げようとすると唸って噛みつこうとするなどの支配的攻撃行動があった犬の例です。

この家庭では毎朝こんなことをやっていたそうです。
「なかなか食べないので、好みの餌も加え、それを食べる真似をします。すると競争心を煽られて、すぐに近づいて食べ始めます。そうなると私は引き下がります」。

どうです、食べ物を犬に譲るという行為で、まさに「あんたが大将!」と教えているやり方です。これでは「俺がボスなのだ」と犬が勘違いしても不思議ではありません。支配的攻撃行動の原点がここにあったのです。

家族構成も考慮すべき要素の一つです。
犬1頭に飼い主さん1人であれば、飼い主さんの愛着は極めて強く、飼い主さんの態度が犬に多大な影響を与えているでしょう。大家族、特に小さなお子さんのいる家庭であれば、犬はそれほど構ってもらえません。飼い主さんの態度の犬への影響力は少ないかなと考えることができます。

家族との関係はどうでしょう。
家族全員が愛着を感じているのか、一部だけか、犬に無関心、あるいは犬嫌いの家族はいないのかなども問題行動を考える上で有用な情報になります。家族全員が愛着を感じている場合、甘やかし過ぎはありますが、家族との関係はおおむね良好だと思われます。

「他の家族は大の犬好きなのに、おじいちゃんだけがダメなのよね~」という家庭はどうでしょう。
おそらく、犬はおじいちゃんを敬遠していると思いますし、おじいちゃんから何らかのストレスを与えられ、葛藤状態に陥ることが多いかもしれません。

知っておいてほしいことは、問題行動を改善するためには、家族全員の協力と一貫した態度が必要な場合が少なくないことです。抜け駆けがあるとうまくいきません。抜け駆けするのはお父さんがどうも多いようです。せめて犬だけには好かれたいとの思いからでしょう。

それから、複数で飼育している場合、問題行動のある犬の地位がわかると役に立つことがあります。でも、飼い主さんの思い込みによる犬の順位付けはダメです。実際の犬の行動から順位をきちんと把握しなければなりません。

そして、“判官びいき”の日本人には心苦しいのですが、何をするにも順位の高い犬を優先させなければなりません。我が家の三四郎に思い上がりが見られたときに、何をするにもボビーを優先しました。三四郎は自分が最下位であることを自覚し、その後は取っ組み合いの大喧嘩はなくなりました。

● 閑話休題 ●

雨の多い5月でした。
湿度が高いと家の中がとても犬臭くなります。
三四郎はそうでもありませんが、ボビーのお尻が特に臭うのです。

晴天の休日は、犬用具を洗濯したり、カーペットを干したり、開けっ放して空気の入れ替えをやったりしました。
本格的な梅雨が思いやられます。

昨今の人間世界では“朝シャン”が当たり前のようになっています。
若くはないボビーですが、生意気にも“朝シャン”をときどきやります。
ただし、頭部ではなく、お尻です。
ゆえに我が家では「尻シャン」と名付けています。
朝の散歩から戻ると、足を洗うとともにお尻をシャンプーです。
かみさんと娘から「人間ウォシュレット」と呼ばれている私です。

さて、「問題行動を考える」の続きです。文章中に、

「支配的攻撃行動(自分の優位性を保つための攻撃行動)」
「防御的攻撃行動(自分を守るための攻撃行動)」
「攻撃的遊戯行動(荒っぽく遊びに誘う行動)」
「転位行動(意味のない行動)」など少し難しい言葉も出てきます。
それぞれの具体的な話、具体的な対処法は別の機会とします。次回までは一般論としてさらりと全体を読んでください。

4.問題行動を解釈する

犬の習性に関連する行動ではないか、犬が学習した結果ではないか、不安・過度の興奮が関与していないかなどを観察から導き出してきます。

この観察は重要です。どんな状況のときに起こったのか、そのときの犬の様子はどうだったか、飼い主さんはどうしたのか…などなどを考えていきます。

犬の習性(本能)が関与する問題行動の代表格は、飼い主さんを手下のように考えての攻撃行動、つまり支配的攻撃行動です。

「飼い犬が食べ物を盗んだので取り上げようとしたら、毛を逆立て唸って食べ物を離さず、ついには私を噛もうとした」…こんな行動は支配性という本能が関与していると考えられます。

その犬は自分がボスだと思い込んでいるに違いありません。日常のちょっとした行動の中にも支配性に基づくものが数々あります。以下のようなことはありませんか、このような傾向が出てきたら要注意ですよ。

【支配性に基づく行動】
  • 気に行った場所から移動させることが難しくなる
  • 口にくわえたものをいやいや離すことがある
  • 食べ物の独占欲が強くなる
  • 命令にすぐに従わなくなる
  • ブラッシングをしたり、撫でたりすると反抗することがある

悪い行動に対して知らず知らずにご褒美を与えていませんか。「お客さんが来たときに興奮するので、静かにするように睨みつけてやるのだが、なかなか治らなくて…」はどうでしょう。

飼い主さんは睨むことで興奮が鎮まると考えています。ところが犬は「お客さんが来たときにはしゃぐと、大好きな飼い主さんが注目してくれるんだ」と学習しています。

飼い主さんと犬の考えがチグハグになっています。このように学習した結果として問題行動が起こる場合も多いことを認識しておきましょう。

落ち着かない、転位行動がある、いつも興奮している、飼い主さんがいなくなると不安がるなどは、過度の興奮・不安が関与した行動です。

また、飼い主さんの気まぐれな罰、家庭内のいざこざ、神経質な飼い主さん、社会化期の体験不足などは、犬に不安状態を引き起こす環境条件になります。

「家庭内のいざこざ」と聞いて、ドキッとしていませんか。家庭円満が立派な犬を作る秘訣かもしれませんよ。

5.原因を特定する

ホルモン的な影響がないか、遺伝的、あるいは社会化期の環境が関与していないか、引き金となった刺激はないか、他の行動と関連がないか、飼い主さんの態度が関係していないかなどを考え、原因を特定します。

性的行動(徘徊、マウンティング、マーキング)及び支配的行動にはホルモンが関与している場合があります。これらは雄に多く見られる問題行動です。男性ホルモンがバリバリになっているのでしょう。

問題行動の始まり、再発にもホルモンが関与している場合があります。ホルモン的な変化が予想された場合(思春期、成熟期、発情期、避妊去勢手術後など)、ホルモン的な要因を疑ってみてもよいようです。

我が家のボビーは、恋の季節になると、かみさんと娘に乗っかってみようとします。背後からそっと近づいて、「そりゃあ!」と乗っかり、その都度叱られています。

ボビーのマウンティングは発情期と関連しています。なお、本人の名誉のために付け加えますが、犬族のマウンティングに好色な意味合いはありません。

犬種に特有な行動がみられる場合は遺伝的な要因が疑われます。過度の興奮は年齢が解決する場合も多いのですが、これに遺伝的素質が絡んでいると矯正がなかなか難しくなります。

社会化期の体験不足、逆に耐えられないような体験をした犬は、落ち着きのない、臆病な犬になってしまうこともあります。

問題行動の引き金となることが特定できれば、対処法も効果的になります。引き金となるものには、場所、時間帯、飼い主さんの態度、他の人間・犬の存在、それから匂い・音などがあります。問題行動はいろんな角度から眺めなければなりません。

さて、我が家の犬達、特にマラミュートですが、家族を愛すがゆえの分離不安による泣き叫びと破壊行動がちょいと多いかなと感じましたし(ベス、ボビー、冬馬=つまり全員)、支配性が絡む問題行動もほどほどにあるように思います(ベスと冬馬)。耐えられないような体験をした場合は恐怖症もあります(冬馬)。

一方、社会化期の失敗による問題行動は三四郎です。知り合い以外には攻撃的になります。

ちょいと言い訳をしますと、同時期にやってきた冬馬に手がかかり、三四郎の社会化が不十分だったのです。

参考のために、いくつかの原因とそれから誘発される問題行動をまとめておきます。

原因:誘発される問題行動あれこれ
  • なんらかの疾患
    無気力、食欲不振、過剰興奮、過度の毛づくろい、攻撃的、室内での排尿・排便、自虐
  • 初期社会化の失敗
    人(例えば子供)、物、動物を怖がる
  • ひどい環境及びストレス
    過度の毛づくろい、さまざまな繰り返し行動、壁をじっと見つめる、尻尾を追いかける、吠えつづける
  • 非常に不快な体験
    ある状況下(子供、他犬、車、花火、雷など)で異常に怖がる、防御的攻撃行動
  • 服従訓練不足
    散歩のときにコントロールできない、食べ物を盗む、靴・家具を噛む、飼い主に対する攻撃的遊戯行動、室内での排尿・排便
  • 飼い主さんによる問題行動の強化
    食べ物を盗む、要求が多い、知らない人・子供への攻撃
  • 犬族の習性
    捕食、攻撃的遊戯行動、同居動物への攻撃、縄張り意識、マ-キング、支配的行動、他犬への攻撃

● さて、また閑話休題 ●

本格的な梅雨になりました。ときどき雷雨もあります。
我が家の犬達は雷が嫌いです。

先日、三四郎と二階の寝室にいました。
すると突然の激しい雷雨です。そして停電です。
三四郎は右往左往していました。

頼りの兄貴分ボビーはまだ居間でくつろいでいます。
ついに「ねえ~、怖いからベッドに上げてよ~」とお願いにやってきました。
ベッドに上げると、外の様子を窺いながらピッタリとくっついてきます。
雷が鳴るとさらに体を押し付けてきます。
頼りにされているようでなかなか良い心地です。

ところがところが、あまりの恐怖でお漏らしをやってしまったのです、
それも我が家で唯一の羽根布団の上に…。

三四郎の頼りはやはりボビーだったようです。
そう言えば「雷に対する恐怖は、飼い主さんがそばにいるより、同居犬がそばにいたほうが和らぐ」
との報告が最近ありました。これを実証したことになりました。

さて、「犬の問題行動を考える」の最後です。対処法についての話です。

6.何らかの対処をする

原因が特定されてやっと何らかの対処ができます。
原因もわからずにあれこれやりますと問題がさらに悪化することもあります。

対処法は原因の種類によります。
病気が原因であれば動物病院での治療が必要になりますし、
問題行動へと導くなんらかの要因があればそれを取り除くようにしなければなりません。
そして最も重要なのは飼い主さんの意識改革のような気がしています。

対処法を紹介する前に覚えておいてほしいことが三つあります。

  • 問題行動は千差万別で、その発生状況もそれぞれ異なる
  • 飼い主さんと犬が相互に影響し合う問題行動もある
  • 飼い主さん自身が原因の問題行動もある

巷にあふれている「犬のしつけ」本を読んで、「よし、即実行!」とやってみても、「なんだ、書いてある通りにやったのに治らないじゃないか」ということもあります。“我が家”の犬の問題行動を深く見つめ、真の原因を見つけなければならないのです。

飼い主さん側の原因を考えることが意外と解決への近道かもしれませんよ。
知らず知らずのうちに飼い主さんが問題行動へ導いていることが実は多いのです。

何かの都合で十分な世話ができず、飼い犬にストレスを与えた結果としての問題行動もあります。
あるいは、望まない行動をした飼い犬に、飼い主さんが間違った対処をした結果、さらに問題が複雑化する場合だってあるのです。

問題行動の対処法として、飼い主さんができることと獣医さんによる治療法(去勢、薬物投与など)があります。
日本では薬物療法はそんなに普及していません。
問題行動に対する薬物療法は途についたばかりだと思います。

まだまだ多くの情報収集が必要です。
時間はかかりますが、薬物に頼らないで問題行動が緩和できればと私は思っています。

問題行動の緩和の方法

薬物療法

問題行動に対する薬物療法は70~80年代に始まりました。

精力的に取り組んでいる獣医さん達は「問題行動治療薬の分野はますます発展するだろう」と考えています。
最近は人間並みに向精神薬(抗ウツ剤など)の使用にも関心が集まっています。

しかし、現状では、臨床経験が少なく、その効果についても正確な情報が得られているとは言えません。
さらに副作用についての情報も不足しています。
使用される薬物は人間用の向精神薬が使われるようです。

ここで注意しておかなければならないことは、「ほとんどの向精神薬は動物用としての認可はなく、あくまでも実験段階である」ということです。

「初期に薬物を与え大きな効果があると、飼い主さんの取り組みも真剣になり、さらに継続して対処をしてくれる。ゆえに、飼い主さんが忙しく時間不足が想定される場合、飼い主さんの意欲が不十分な場合、飼い主さんに対処法を長く継続させたい場合などに薬物が用いられる」

とある書籍に書いてありました。「な~んだかな~」と思ってしまいました。
なお、薬物を使用する場合も単独では用いません。
必ず一般的対処法との併用です。薬物だけに頼る対処法は誰も推奨していません。

一般的対処法

一般的な対処法は大きく分けて三つです。

  1. 問題行動を誘発する刺激・ストレスをなくすこと
  2. 問題行動に影響する要因を取り去ること(病気の治療など)
  3. 環境を改善すること

特に三番目はいろんなことが考えられます。
飼育環境を改善する、人と犬の関係を見直す、服従訓練をやり直す、
飼い主さんの支配性を強化する、飼い主さんの思い違いを正す、飼い主さんの態度を見直すなどなどです。

正しい服従訓練を行い、飼育環境を改善することで、問題行動が解決する場合もあります。しかし、それ以上に飼い主さんの態度の改善が必要な場合が少なくありません。

実際、米国の問題行動カウンセラーは「飼い主さんの思い違い、間違った態度、感情的な対処を変えていくことで、多くの問題行動を解決できる」と考えています。

どういう訳か、多くの飼い主さんは、「どんな犬も大好きな食べ物を守ろうとして家族にも攻撃的になる」、「無視したら犬は寂しく思うだろう」、「人は動物にいつも優しく接すべきである」、「犬を世話することとは、犬が望むことをやってあげること」と考えています。

これは正しい理解でしょうか。