一昔前は、骨折といえばお外で交通事故で起こしてくることが多かったのですが、近年外飼いの子が減りToy犬種の人気により、最近では骨折といえば小型犬種の橈尺骨骨折が多いです。
橈尺骨とは橈骨と尺骨のことで前腕の骨です。
折れてしまう原因としては、ソファや飼い主様の手からの落下などの比較的低いエネルギー外傷によって生じ、その多くが橈骨遠位 1/3の部位に起こります。
実は、Toy 犬種の橈骨の遠位端(前腕の手首の付近)は大型犬に比べて血流が少ないことがわかっています。(下の図の青四角で囲 んでいるところは小型犬の橈骨遠位端の血流を表しております。その下の図が大型犬のものになり血流が豊富であることがわかります。)
骨への血液供給は2/3 を内骨膜から受けており、残りの1/3 を外骨膜から受けていて骨癒合と骨密度は血行の影響を強く受けるのです。
そのようなToy犬種の骨折治療は細心の注意が必要になります。以下のようなデータがあります。
当院では、Toy犬種の橈尺骨骨折において、ほとんどの症例でプレート法を採用しております。
プレート法では皮質骨( 骨の硬い部分、レントゲンで白く見える部分) 同士をピッタリ合わせて骨の細胞(骨芽細胞、破骨細胞)を 行き来させて骨をくっつけていきます(骨癒合)。
インプラントにはLCP、Fixin microのようなロッキングプレートやToy cuttable plate を症例の体重、動き、骨幅により使い分けております。
始めの手術で皮質骨同士をぴったりあわせ、ロッキングスクリュー2本ずつ計4本でリジットに固定します。約1ヶ月で真ん中の2本のスクリューを抜きます。間引きをすることで骨にかかる負荷を増やし骨の癒合を促します。それから1 ~1.5ヶ月でインプラントをとります。これは以下のFixin microでも全く同様です。
さらに小さいToy犬種の場合は、今日本で認可の取れている最小のスクリュー(1.1mm)を利用することのできるトイカッタブルプレートを使用しております。
いずれの方法においても大事になってくるのは、
また、退院してからの飼い主様のご協力が不可欠です。(安静にさせていただく等)
そして、骨折が癒合した直後は橈骨自体がまだ硬く、その本来のしなりを取り戻すためには約1年くらいかかると言われております。
Toy犬種を飼われている飼い主様にマスターしていただきたい抱っこの仕方があります。
①まず、ワンちゃんの前足の間に手を入れホールドするようにします。
②次に逆の手でワンちゃんの後ろ足を持ち、小脇に抱えるようにします。
③足を持った手を離し、肘でしっかりワンちゃんの腰をホールドします。この時、ワンちゃんの後ろ足はフリーになりパタパタ動いても大丈夫です。
大事そうに抱えていますが、飼い主様の左手を台にしてジャンプできてしまいます。特に子犬は色々なものに興味を 持ち、いつ何時飛び降りてしまうかわからないのです。小型犬を飼ってらっしゃる飼い主様は抱っこの仕方に是非気をつけてください。