翔ちゃん先生の一言コラム

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1. ワクチンとは

1-3 生(なま)ワクチンと不活化(ふかつか)ワクチン

ワクチンは、使用されている病原体が生きているか、死んでいるかで
生ワクチンと不活化ワクチンに大別されます。
生きた病原体を使うのが生ワクチン、死んだ病原体を使うのが不活化ワクチンです。
犬用ワクチンでは生ワクチンと不活化ワクチンを混ぜて使用することもあります。


【生ワクチン】

生きた病原体を使用しますので、病気を起こしてしまうほど強い病原体は困ります。
それで病原性を弱める操作を施します。これを「弱毒化」といいます。


弱毒化にはいろんな方法がありますが、ウイルスの場合 試験管内の細胞などで何代も継代する方法が一般的に用いられます。

継代することにより突然変異が起こり、犬に対して病原性が低くなるのです。
継代のころあいを見計らってワクチン製造用株とします。



このころあいを誤ってしまうと、安全性は高いが効き目が低い“水のようなワクチン”
逆に効き目は高いが安全性にやや問題を残し、使い方に注意しなければならない“ピリ辛ワクチン” に
なることもあります。弱毒ウイルスを作り出すには多大な労力と時間を要します。
最近は遺伝子工学技術で人工的に弱毒ウイルスを作ることも試みられています。


生ワクチンの効き目は早く現れ、長く続きます。
また、液性免疫とともに細胞性免疫も誘導でき、総合的な予防効果が期待できます。


移行抗体の影響がなければ、1回だけの接種で十分な免疫を与えることができます。
自然感染経路から接種すると局所免疫(鼻粘膜、気管、腸管など局所で働く免疫)も誘導できます。
ただし、日本で市販されているワクチンには自然感染経路から接種するワクチンは現在のところありません。
全て皮下接種か筋肉内接種です。


こう聞きますと生ワクチンはよいことばかりのようですが、そうはいきません。
犬の感受性、健康状態にもよりますが、生ワクチン接種で発病する危険性があります。
他の犬に伝染することもあります。


また、製造原料、あるいは製造工程中に他の危険な病原体が混入する場合もあります
(業界用語では迷入といいます)。
既に知られている病原体であれば、品質管理検査で発見することもできます。
しかし、未知の病原体は現状の検査システムでは検知できません。

【不活化ワクチン】

増殖させた病原体を薬品などで殺したワクチンが不活化ワクチンです。
病原体から有効抗原だけを取り出したり、あるいは遺伝子工学を駆使して人工的に
有効抗原を作り出したりして、製造したワクチンも不活化ワクチンの一種です。
有効抗原だけから成るワクチンをコンポーネントワクチン、サブユニットワクチンとも呼びます。


不活化ワクチンは免疫の成立がやや遅く(効き目が直ぐには現れない)、持続も短いのが特徴です。
この不活化ワクチン接種では主として液性免疫が誘導されます。


強固な免疫を得るためにはアジュバント(免疫増強物質)の添加が必要な場合が多く
少なくとも2回は接種しなければなりません。生ワクチンでは体内で病原体が増殖しますので
ワクチン中の抗原量はそんなに多くは必要ありません。


しかし、不活化ワクチンでは体内での増殖がありませんので、大量の抗原を接種する必要があります。
このためアレルギー反応を起こしやすい弱点があります。
なんとなく生ワクチンと比較して劣るように思えますが、なにせ製造工程中に病原体を殺す操作をしますので
発病の危険性、他病原体の迷入の危険性がありません。つまり安全性が高いのです。


さらに移行抗体の影響も比較的受けにくく、二次免疫応答を強く誘起することも長所です。
保存性がよいのも特長です。弱毒化が困難な病原体でも不活化ワクチンにはすることができます。


生ワクチン、不活化ワクチンにはそれぞれ長所・短所があります。
これを知った上で上手に使用することが大切です。